うちに昔からやっているアートフレームという商品(というか作品)があるが、これとかつていくつか作った事がある掛け軸の製造・販売をとある工芸メーカーと契約する事にした。絵はもちろん私が描くのだが、今後うちでは販売出来なくなる。立派な額装と軸装がなされてそこそこの値段で売られる予定だ。私は毎月契約した一定の枚数を納品することになる。実は今までもこうしたオファーは色々あったのだが、乱暴な話が多く、体よく断ってきた。中には心が揺らぐような金額を提示してくるところもあったが、私にはリアリティが無かった。今回なぜ決断したかというと理由は2つある。ひとつは私がある程度の年齢になったこと。「私が死んだらどうしますか?」とこのメーカーの社長に聞いたところ「シルクスクリーンでアウトラインの版を作り、娘さんかスタッフの方にでも着彩してもらって続けたい」という事だった。これには心が揺れた。何も近々死ぬ予定があるわけでは無いのだが(笑)そういうリスクを考えなければならない年になったのは確かだ。老眼も進み、若い頃のようにパワープレイで描きまくるという訳にはいかない。自分の仕事を犠牲にしてカミさんにトントンと木枠をいつまでもつけてもらうのも申し訳ない。まだ中学生の娘があてになるわけでも無いし、スタッフがいる訳でも無いが、何らかの形で作品が亡き後も残っていくのは私の夢だった。それともうひとつはこのメーカーの社長が極めて熱心で良い人だったというのがある。そもそも世界的なビッグネームの版画などを多数作っている所が私に何の用ですか?という感じだったのだが、私の作品と活動をあるていど時間をかけて観ておられ、一定の戦略と目算を持っておられた。「先生の作品は値段が安すぎて逆に道を狭めている」という言葉にも随分思いあたるふしがあった。文字が入っているせいで外国の方にもとても人気があるシリーズで問い合わせは多いのだが、海外のギャラリーは二の足を踏むことが多かった。商売にならないという事だろう。(それでも台湾とイギリスで売っているが、台湾で見た時は4倍の値段がついていた。)だが、それでも私の中では「うーん・・・どうかなあ」というのがあったのだが、価値を高めてくれるのは確かだし、それは今まで買ってくれた方への恩返しにもある意味なるのかなあとも思ったのだ。持っている人が誇りを持てるものにしていくのも作家の役目かなとも思った。せめてもの形として、新作を多数作りそれを中心として展開していくことにはなると思うが、逆にもうほとんど描くことが無い旧作もかなり出てくることになる。感慨深い感もあるし、少し淋しい気持ちもある。今後は美術系の売り場を中心に色んなところで販売されていく形になると思います。詳細が解ったら詳しくお伝えします。皆様には本当に申し訳ないが、そうした事情・状況をご理解いただきたいと思います。原画も扱わせて欲しいという要望もあったのですが、何とかそれは勘弁してもらいました。これは今まで通りの形で続けて行きます。猶予期間を何日かいただいて、5月29日一杯でオンラインショッピングからアートフレームを外します。出来るだけのことはさせてもらいますので、それまでに気になっていたものがあったりする方は是非お買い求め下さい。写真は最新の原画作品。
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